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奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島

2021年11月26日

自然遺産
遺産名:
奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島
Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, Northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island
国名:日本
登録基準:(x)
登録決定:
2021年7月26日の世界遺産委員会において、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録が正式に決定となった。日本では24件目の世界遺産に、自然遺産としては小笠原諸島以来10年ぶりの5件目となった。
2019年2月、再推薦にあたっては、登録基準ix(生態系)での登録については断念し、登録基準x(生物多様性)での登録に一本化することとした。また、沖縄の北部訓練場返還地をやんばる国立公園に編入するなどして推薦面積を4万2698ヘクタールに拡大した。
概要:
日本の南西部に位置する4つの島の42,698ヘクタールの亜熱帯雨林で、東シナ海とフィリピン海の境界に弧を描くように存在している。人間が全く住んでいないこの場所は、生物多様性の価値が高く、非常に高い割合で固有種が存在し、その多くは世界的に絶滅の危機に瀕している。このサイトには、植物、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、内水面魚類、十脚甲殻類などの固有種が生息しており、例えば、絶滅寸前種であるイリオモテヤマネコや絶滅危惧種のアマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)や絶滅危惧種のリュウキュウハツカネズミ(Diplothrix legata)は、古代の系統を代表する種で、世界のどこにも生きている親戚がいない。また、敷地内の5種の哺乳類、3種の鳥類、3種の両生類は、世界的にEDGE(Evolutionarily Distinct and Globally Endangered)種と認定されている。また、敷地内の他の場所では見られない、それぞれの島に限定されたさまざまな固有種がある。

(『世界遺産センター』HPより)

地図

スライドショー

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奄美大島

(Flickr)

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徳之島

(Flickr)

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沖縄島

(Flickr)

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西表島
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登録基準

(ⅹ)【絶滅危惧種】学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など,生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

登録基準は(x)「絶滅危惧種を含む生物多様性」で、日本では「知床」に続いて2件目。日本の自然遺産では唯一、登録基準(ix)が認められない遺産となった。登録基準(ix)は、2018年に推薦書を取り下げた時は入れていたものの、IUCNからその価値は認められないと否定されたため、今回の推薦では外していた。

遺産の概要

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、日本列島の九州南端から台湾までの海域の約1,200kmに点在する琉球列島のうち、中琉球の奄美大島と徳之島、沖縄島、南琉球の西表島にある5つのエリアで構成される。徳之島だけ2つのエリアに分かれている。2011年に登録された「小笠原諸島」以来、10年ぶりに日本で5番目の自然遺産として登録された。

遺産の登録地域は、その面積が日本の国土面積の0.5%に満たないにも関わらず、日本の動植物種数に対して極めて大きな割合を占める種が生息・生育している。例えば、維管束植物は1,819種、陸生哺乳類21種、鳥類394種、陸生爬虫類36種、両生類21種が生息・生育している。全体として、陸域生物多様性ホットスポット「ジャパン」の陸生脊椎動物の約57%が推薦地を含む4地域に生息し、その中には日本固有の脊椎動物の44%、日本の脊椎動物における国際的絶滅危惧種の36%が包含される。また、推薦地では、国際的絶滅危惧種95種を含め、絶滅危惧種の種数及び割合も多い。

IUCNレッドリスト記載種のうち、奄美大島と徳之島の「アマミノクロウサギ」は1属1種で近縁種は存在しない。沖縄島北部の「ヤンバルクイナ」は、絶滅しやすいことが知られている島嶼の無飛翔性クイナ類の1種である。「トゲネズミ」属は固有属で、中琉球の3地域にそれぞれの固有種が分布する。イリオモテヤマネコは“ヤマネコの生息する世界最小の島”西表島だけに生息する。

また登録地では、多様な種分化固有種の例が豊富に見られる。例えば、維管束植物は188種が、昆虫類は1,607種が固有種である。特に、陸生哺乳類(62%)、陸生爬虫類(64%)、両生類(86%)、陸水性カニ類(100%)では極めて高い固有種率を示している。これら推薦地の固有種には、進化的に独特かつ地球規模の絶滅危惧種であるEDGE種として選定されている種が20種もあり、そのうち、オキナワトゲネズミ、リュウキュウヤマガメ、クロイワトカゲモドキはトップ100種にランクされている。

このような、生物種数の多さ、絶滅危惧種や固有種の数の多さと割合の高さ、また、多様な種分化や進化の独特さは相互に関連しており、中琉球及び南琉球が大陸島として形成された地史の結果として生じてきた。琉球列島は中新世中期以前にはユーラシア大陸の東端を構成していたが、沖縄トラフや3つの深い海峡の形成によって大陸や他の島嶼と隔てられ、小島嶼群となった。そこに生息・生育していた陸域生物は、小島嶼に隔離され、独特の進化を遂げた。このため中琉球及び南琉球では、海峡を容易に越えられない非飛翔性の陸生脊椎動物群や植物で固有種の事例が特に明瞭に示されている。

(環境省の公表資料より)

イリオモテヤマネコ

イリオモテヤマネコは、八重山列島の西表島で発見されたベンガルヤマネコの亜種です。遺伝情報の分析により、ベンガルヤマネコの亜種として分類されています。西表島は日本列島で最も小さな島で、イリオモテヤマネコはその固有亜種です。彼らは亜熱帯もしくは暖帯の森林に生息し、主に標高200メートル以下の地域に生息します。体長はオスが55-60センチメートル、メスが50-55センチメートルで、体重はオスが3.5-5キログラム、メスが3-3.5キログラムです。彼らの体色は暗灰色や淡褐色で、頭部には暗褐色の斑があります。

イリオモテヤマネコは西表島の山麓から海岸にかけての低地部分に主に生息しています。この地域にはシイ・カシ林、湿地林、マングローブ、海岸林など多様な植生環境があります。イリオモテヤマネコは多様な水環境と餌となる生き物が豊富に存在するこの地域を好みます。また、西表島の小さな面積にもかかわらず、イリオモテヤマネコが生息できる秘密は、西表島の生物の多様性と進化によって獲得した適応能力にあります。彼らはネズミやウサギだけでなく、トカゲ、ヘビ、カエル、コオロギ、オオコウモリ、鳥類、テナガエビなどさまざまな動物を餌として利用します。イリオモテヤマネコは主に夜行性で、薄明薄暮型の活動パターンを持ちます。ネコ科動物のほとんどは単独で行動しますが、イリオモテヤマネコも定住個体と放浪個体が存在し、定住個体は行動圏を持ちます。イリオモテヤマネコは日本の特別天然記念物に指定されています。

参考リンク:
[blogcard url="https://iwcc.jp/iriomotecat/cat/"]

アマミノクロウサギ


アマミノクロウサギ(奄美の黒兎、Pentalagus furnessi)は、哺乳綱兎形目ウサギ科アマミノクロウサギ属に分類されるウサギで、日本の奄美大島と徳之島に生息しています。絶滅危惧種であり、2021年時点の推定個体数は1万1549〜3万9162匹です。アマミノクロウサギは頭胴長が41.8〜51センチメートルで、全身は光沢のある長い体毛と柔らかい短い体毛で覆われています。背面は黒や暗褐色、腹面は灰褐色です。眼と耳介は小さく、四肢は短く、後足は特に短いです。アマミノクロウサギは穴を掘るのに適した指趾を持ち、属名Pentalagusは「5つの歯のあるウサギ」を意味します。

アマミノクロウサギは、胎生の繁殖様式を持ち、直径10〜20センチメートル、長さ100〜200センチメートルに達する繁殖用の巣穴を掘ります。飼育下では4〜5月と10〜12月に1回に1頭の幼獣を産むことがあり、野生個体でも春と秋に2回産むことが観察されています。メスは幼獣のいる巣穴に立ち寄り、授乳が終わると巣穴の入り口を塞ぎます。幼獣は生後約2か月で巣穴の外に出るようになり、一ヶ月ほど巣穴の中で過ごし、その後は母親に連れられて移動します。飼育下での寿命は約15年です。

アマミノクロウサギの生息数は、1950年代以降の森林伐採や植林、道路建設、河川改修による生息地の破壊・分断、交通事故、野犬や野猫、フイリマングースによる捕食などの影響で減少しています。しかし、環境省によるフイリマングースの駆除事業の進展に伴い、フイリマングースの減少とともにアマミノクロウサギの生息数も回復傾向にあります。環境省は交通事故を防ぐために夜間の運転注意呼びかけやフェンス設置を進めていますが、2022年9月末時点での事故死した個体数は過去最多の89匹となりました。

ヤンバルクイナ


ヤンバルクイナは、世界中で沖縄県北部のやんばる(山原)地域だけに生息している飛べないクイナです。1981年、山階鳥類研究所の研究員らによって学問の世界に未知の鳥であることが確認され、新種として発表されました。この20年ほどの間に、ヤンバルクイナの個体数は減少の一途をたどり、分布もどんどんせばまっており、日本の鳥の中でもっとも危機が迫っている種といえます。

平地から標高500メートル以下にある主に下生えが繁茂した常緑広葉樹林に生息するヤンバルクイナは、樹上で休み、ほとんど飛翔せず、薄明・薄暮時に鳴き声を挙げて縄張りを主張します。

2016年の胃の内容物調査では、昆虫、腹足綱、ミミズ、果実、種子などが報告されました。特にバンダナマイマイやオキナワヤマタニシなどの腹足綱が多く見つかりました。また、大型の腹足綱は殻を割って軟体部のみを食べ、小型の巻貝類やヤマタニシ類は丸飲みにする傾向があります。植物質の消化には苦労しており、アカメガシワやキキョウラン、ゴンズイ、ホウロクイチゴ、ヤマモモ、イヌビワ類などの種子の散布に関与している可能性が示唆されています。

ヤンバルクイナの生息数は減少しており、森林伐採や農地開発、交通事故、捕食などが主な脅威となっています。現在、保護増殖事業や飼育下繁殖の試みが行われています。

ヤンバルクイナは、森林伐採や農地開発、林道やダムの建設による生息地の破壊や分断、交通事故、捕食などにより生息数は減少しています。マングースやネコによる捕食も懸念されています。特にマングースの分布とヤンバルクイナの分布の変化は一致し、マングースが減少の主な原因と考えられています。交通事故も問題であり、特に繁殖期に多く発生しています。現在、保護増殖事業や飼育下繁殖の試みが行われています。

2000年度から沖縄県と環境省により、マングースやネコの駆除・捕獲が行われていますが、完全な駆除はまだ達成されていません。マングースに対しては、捕獲や柵の設置、探索犬の導入などの対策が進められています。ネコに対しては、地方自治体による飼育条例の制定やマイクロチップの埋め込みなどの対策が行われています。1999年には「やんばる野生生物保護センター」が設置され、2005年には「ヤンバルクイナ救急救命センター」の運営が開始されました。1982年には国の天然記念物に指定され、1993年には種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されました。

ヤンバルクイナの生息数は、1985-1986年に約1,800羽、2005年に約720羽、2010年に845-1,350羽、2014年に1,500羽と推定されています。近年、以前確認できなかった地域での生息が確認されていますが、分布域はまだ不連続であり、安定した生息状況ではありません。

環境省による「ヤンバルクイナ保護増殖事業計画」が2004年から策定され、生態調査や飼育下繁殖施設の建設が進められています。2009年からは飼育下繁殖法を確立させる試みも行われており、2015年時点での飼育個体数は68羽です。

世界遺産クイズ

世界遺産検定クイズ

動画へのリンク

菅首相の挨拶

時事通信社のニュース

【TBS世界遺産】撮影秘話 奄美大島、徳之島(日本)

UNESCO公式HP(英語版)へのリンク

https://whc.unesco.org/en/list/1574

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