基本情報
文化遺産
資産名:人権と自由、和解:ネルソン・マンデラの遺産
正式名:Human Rights, Liberation and Reconciliation: Nelson Mandela Legacy Sites
国名:南アフリカ共和国
登録年:2024年
登録基準:(vi)
概要
南アフリカの人権、解放、和解を象徴する「ネルソン・マンデラ・レガシー・サイト」が世界遺産として登録された。この遺産は、20世紀の南アフリカの解放闘争の歴史を反映し、人権、解放、和解という三つの概念が密接に結びついていることを示している。これらの要素の相互作用が、アパルトヘイトという人種差別制度からの自由への道を切り開くうえで重要な役割を果たした。国際社会は、抑圧によって苦しめられた人々を支持し、南アフリカの闘争を人権の普遍的価値として認識した。特に、この遺産の特徴は、和解が国づくりの基盤であることを強調している点にある。
このシリアル遺産は、南アフリカの解放闘争の核心にあった出来事、思想、信念を示しており、四半世紀を経た現在も、和解の理念が人類に影響を与え続けている。解放闘争の本質は、人権、解放、和解の結びつきにあり、人権は全ての人に本質的かつ不可分に属するという確固たる信念のもとに戦われた。闘争の目的は、人種差別に基づく抑圧的な制度そのものを打倒することであり、特定の人種集団との対立ではなかった。この認識が指導者たちによって広く共有されたことで、和解への道が開かれた。10の構成資産は、それぞれ人権、解放、和解という要素と結びつき、南アフリカの解放闘争を成功に導いた過程を象徴している。
また、非人種主義やパン・アフリカニズムの思想は闘争を通じて受け継がれ、最終的には人権を基盤とした平和で公正な社会の実現を目指すビジョンへとつながった。さらに、「ウブントゥ(Ubuntu)」という理念も重要な役割を果たした。この概念は、人間性は個人の中にあるのではなく、互いに分かち合うものだとする考え方であり、人々が共に生きることの重要性を説いている。ウブントゥは、アパルトヘイトから多数派統治への移行における指針となり、対立する勢力の和解を促し、新しい社会の構築に寄与した。これは、1993年の南アフリカ暫定憲法のエピローグに「理解は必要だが復讐は不要、償いは必要だが報復は不要、ウブントゥは必要だが被害者意識は不要」と記されたことにも示されている。
このように、ネルソン・マンデラ・レガシー・サイトは、人権、解放、和解が織りなす南アフリカの歴史と、その理念が今日も世界に与える影響を証明する重要な遺産である。