2024年新規登録遺産

ウンム・アル・ジマール

2025年2月25日

基本情報

文化遺産

資産名:ウンム・アル・ジマール

正式名:Umm Al-Jimāl

国名:ヨルダン・ハシェミット王国

登録年:2024年

登録基準:(iii)

概要

ウム・アル=ジマールは、現在のヨルダン北部に位置する遺跡で、5世紀頃にローマ時代の集落跡の上に形成され、8世紀末まで存続した。集落は三つの地区に分かれ、多層構造の中庭付き住居が集まっており、16の異なるタイプの教会を含んでいた。町のレイアウトと特異な玄武岩(黒曜石)建築は、地元ハウラーン地方の建築様式を反映し、実用性や経済性、耐久性を重視した設計が特徴である。また、ビザンツ時代には、ローマ帝国時代の軍事建築が再利用されるなど、地域の伝統の持続性が見られる。

この町は広範な農業地帯の一部を成し、ワジ(涸れ川)からの灌漑を支える複雑な集水システムを備えていた。ビザンツおよび初期イスラム時代におけるハウラーン高原の農牧文化を示し、社会的価値観や文化伝統を体現する集落として機能した。このような特徴から、ウム・アル=ジマールはハウラーンの農村文化の代表例であり、政治・宗教の変遷にも関わらず建築様式や伝統を維持した証拠となっている。

保存状態と課題

ウム・アル=ジマールは、町の石造りの城壁に囲まれた範囲内に、集落の全要素を含んでいる。遺跡は意図的に廃墟のまま保存されており、全体的な状態は良好であるものの、多くの構造物が不安定であり、管理不足による脆弱性が指摘されている。特に北部の未整備区域の保存が急務である。また、周辺の農業景観が都市開発により変化し、古代の墓地が損傷を受けるなど、広域的な景観の一体性が損なわれている。西側のワジ再開発プロジェクトも遺跡の景観に悪影響を与え、緩衝地帯内の近代建築物が視覚的な統一性を損なう要因となっている。

遺跡の真正性

ウム・アル=ジマールは、形態・設計・材料の面で高い真正性を保持している。170以上の構造物のうち、考古学的に調査されたのはごく一部であり、修復は最小限に抑えられている。保存処置は主に補強作業にとどまり、一部の建物ではアナスティローシス(元の部材を用いた再建)が行われた。唯一再建された建物(119号館)は、現在ビジターセンターおよび博物館として利用されている。また、集水システムの一部が近代的なホースを用いて復元され、古代の灌漑方法を再現している。一方で、都市化の影響により、遺跡周辺の農業景観や古代墓地が損傷を受け、景観の真正性が低下している。

世界遺産クイズ

ウンム・アル=ジマール遺跡の建物はどんな材料で造られていますか?

-2024年新規登録遺産