基本情報
自然遺産
資産名:フロー・カントリー
正式名:The Flow Country
国名:イギリス
登録年:2024年
登録基準:(ix)
概要
要約
フロー・カントリー は、世界で最も優れたブランケットボグ(広大な泥炭地) の例とされ、スコットランド北部本土に約19万ヘクタールにわたって広がる。この泥炭地は9,000年以上にわたり蓄積され、複雑な池や丘、尾根のネットワーク を形成している。泥炭地は炭素の貯蔵に重要な役割を果たし、フロー・カントリーでは深さ8メートル以上の泥炭層が確認されており、現在も活発な泥炭形成プロセスが進行し、大規模な炭素吸収が続いている。
また、この地域は多様な生態系を持ち、北極・亜寒帯・温帯・大陸性気候の鳥類 が混在する独特の鳥類群が生息している。さらに、農業や沿岸地形と連携した自然環境が広がり、貴重な研究・教育資源としての価値も認められている。国際的および国内の保護制度によって保護されており、隣接する劣化した泥炭地の回復を通じて、今後の拡張が見込まれている。
生態学的価値と重要性
- 独特の形成過程と長期的な炭素吸収(Criterion ix)フロー・カントリーの泥炭地は、氷河が後退した後の気候・地形・地質条件の影響を受けて形成 された。この地域の多雨環境が、土壌の長期的な水浸状態を維持し、丘陵や谷間を覆う広大な泥炭地を生み出した。世界的にも稀なほぼ連続した自然状態のブランケットボグ であり、形成プロセスが9,000年にわたって継続している。
- 生物多様性の宝庫泥炭層には花粉や植物の化石 が保存されており、過去の植生や生態系の変遷、人間の影響を解明する貴重な記録となっている。また、泥炭地は29〜34種のミズゴケ(Sphagnum) を含み、酸性・低酸素・低栄養の環境に適応した微生物や鳥類の生息地となっている。特に、この地域には大西洋・北方・北極圏の生物相が混在する独自の生態系 が存在している。