ロンドン塔と高層ビル (Flickr)

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人間と生物圏計画

人間と生物圏計画 Man and Biosphere program

「人間と生物圏計画」(MAB計画)は、社会生活や商工業活動などの人間の営みと自然環境の相互関係を理解し、環境資源の持続可能な利用と環境保全を促進することを目的に、ユネスコが1971年に立ち上げた研究計画。人類と環境の接点に注目し、そこで起こりつつある問題の解決を目指しており生物多様性と経済活動を機能的に結びつけるための、科学的な研究やモニタリング、人材育成などが行われている。

生物圏保護区(Biosphere reserves)は、陸域、海洋、沿岸の生態系からなる地域である。各保護区は、生物多様性の保全とその持続可能な利用を両立させる解決策を推進している。生物圏保護区は、各国政府によって推薦され、それらが位置する国の主権的な管轄下にあります。生物圏保護区の地位は国際的に認められている。生物圏保護区は、「持続可能性のための科学支援サイト」であり、紛争予防や生物多様性の管理を含む、社会システムと生態系システムの間の変化と相互作用を理解し、管理するための学際的なアプローチを試すための特別な場所である。生物圏保護区には、「核心地域」(core area)「緩衝地帯」(buffer zone)「移行地帯」(transition area)という相互に関連する3つのゾーンがあり、3つの補完的かつ相互に補強する機能を果たすことを目的としている。

コアエリアは、厳密に保護された生態系で構成され、景観、生態系、種、遺伝子変異の保全に貢献している。バッファー・ゾーンは、コア・エリアを取り囲むか隣接しており、科学的研究、モニタリング、トレーニング、教育を強化することができる健全な生態学的慣行に適合した活動に使用される。移行地帯は、社会文化的にも生態学的にも持続可能な経済的・人間的開発を促進するために、最も大きな活動が許される保護区の一部である。

世界遺産と緩衝地帯(バッファー・ゾーン)

本来保護すべき範囲の外側に緩衝地帯を設定するという考え方は、自然保護に見られた概念を文化遺産にも拡大したものといえる。緩衝地帯の役割は、資産の保護のために設定される区域で、法的あるいは慣例的に開発などは規制を受ける。たとえばフランスの場合、歴史的記念建造物の周囲には一律(半径500メートル)に規制が敷かれるが、世界遺産の場合、保護する範囲に機械的な線引きはなく、また資産全体に同じ範囲だけ設定しなければならないものではない。そもそも緩衝地帯は当初、方針文書に明記されておらず、ごく初期の世界遺産には設定されていなかった。1980年や1988年の「作業指針」で段階的に盛り込まれていったが、厳格な適用を求める方向で「作業指針」が改定されたのは2005年のことで、設定しない場合には理由の提示が必要となった。世界遺産の推薦にあたっては、原則として資産だけでなく緩衝地帯についても、規模や用途などを明記し、地図も提出する必要がある(「作業指針」第104段落)。

生物圏保存地域と異なり、緩衝地帯の外側に移行地域が存在しないため、緩衝地帯のすぐ外側での開発などが問題視されることが出てきた。たとえばロンドン塔の場合、超高層建築ザ・シャードが緩衝地帯の外に建てられたが、ロンドン市内で突出したその高さは、ロンドン塔の景観にも影響を及ぼしてしまっている。これは緩衝地帯の外であったため、世界遺産委員会では懸念は表明されたものの、それ以上の措置には踏み込まなかった。世界遺産委員会では、緩衝地帯の外でさえ、景観に影響を及ぼす場合には規制すべきという意見も出されるようになっている。その一方、都市の成長や開発に対する過度の抑制につながることを懸念する論者もいる。

前述のように、緩衝地帯は理由を明記すれば、設定しないことも許容される。許容されるための理由としては、資産そのものの保護範囲がもともと十分に広く設定されている場合や、大平原や地下など、資産の所在環境による条件を勘案して緩衝地帯の設定が無意味、あるいは不要などと判断される場合などがある。しかし、フォース橋(2015年登録)が保護範囲の十分の広さを理由に緩衝地帯を設定しなかったところ、その審議が紛糾した例などもあり、専門家からは緩衝地帯を設定しない推薦は例外的なものと見なされている。

(Wikipediaより)

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