パリ・ルーヴル美術館, Flickr

世界遺産の関係機関

世界遺産委員会

2021年6月27日

世界遺産委員会の概要

世界遺産委員会は、世界遺産に関して話し合うための国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の委員会。通常1年に1回開催される政府間委員会。世界遺産リストの記載に関する審議危機遺産リストの審議世界遺産基金の使途の決定作業指針の改定登録遺産の保全状況の審査などを行う。

世界遺産条約締約国のうち、世界遺産条約締約国総会で選出された21か国の委員国で構成されるが、選出に当たっては地域のバランスが配慮される。委員国の任期は6年だが、自発的に4年に短縮することが可能である。任期終了後、次の立候補まで間を6年あけることが求められている。

会議には諮問機関である国際自然保護連合 (IUCN)、国際記念物遺跡会議 (ICOMOS)、文化財の保存及び修復の研究のための国際センター (ICCROM) の代表者や非政府組織なども参加する。 事務局は世界遺産センターが務めている。

世界遺産委員会の設置

世界遺産委員会は、1976年の第1回世界遺産条約締結国会議において設立された。当初は締結国の中から選ばれた15カ国で構成されていたが、世界遺産条約締結国が40カ国に達したため、1977年の第1回世界遺産委員会(パリで開催)からは21カ国に増枠された。委員国の任期は6年だが、自発的に4年に短縮することが可能である。会議には諮問機関である国際自然保護連合 (IUCN)、国際記念物遺跡会議 (ICOMOS)、文化財の保存及び修復の研究のための国際センター (ICCROM) の代表者や非政府組織なども顧問の資格で参加することができる。

委員国の選出には地域間の公平性も考慮されており、「西欧・北米」から2カ国、「東欧」から2カ国、「ラテンアメリカ・カリブ海」から2カ国、「アジア・太平洋」から3カ国、「アフリカ」から4カ国、「アラブ」から2カ国が最低でも選ばれることが定められている。

ビューロー会議の設置

世界遺産委員会は、議長国1カ国、副議長国5カ国、書記国1カ国の7カ国で構成される任期1年のビューロー会議を設置する。ビューロー会議は世界遺産委員会の進行や作業日程の決定を行い、世界遺産委員会の最終日に、次回の世界遺産委員会のビューロー会議構成国が決定される。

世界遺産委員会の主な審議事項

(1) 世界遺産リストへの登録推薦書が提出された遺産の審議
(2) 危機遺産リストへの遺産登録や解除の決定
(3) 世界遺産リスト登録遺産の保存状況のモニタリング及び報告書を通した調査
(4) 世界遺産基金の使途の決定
(5) 作業指針の改定及び採択
(6) 2年ごとの世界遺産条約締結国会議とユネスコ総会への活動報告書提出
(7) 国際的援助の要請と審査

◎世界遺産リストへの登録推薦書が提出された遺産の審議:

次の4段階で決議を行う。

登録:顕著な普遍的価値があるとして世界遺産リストへの記載を認める決議
情報照会世界遺産委員会が追加情報を求める決議。次回の世界遺産委員会に推薦書を再提出い、審査を受けることができる。
登録延期より綿密に評価・調査を行う必要があるか、推薦書の本質的な改定が必要とされる決議。
不登録:世界遺産委員会が推薦遺産を世界遺産リストへ記載するのにふさわしくないと判断した決議。例外的な場合を除き再推薦は認められていない。

世界遺産センター(世界遺産委員会事務局)

世界遺産センターは、世界遺産委員会を補佐する世界遺産委員会事務局の役割を担うため、1992年に設立された。パリのユネスコ本部内に常設されており、ユネスコ事務局長は、世界遺産センター局長を世界遺産委員会の秘書に任命している。

世界遺産センターの主要な任務:
(1) 世界遺産リストへの登録推薦書を受理し、事務局登録して専門調査を依頼すること
(2) 世界遺産条約締結国会議と世界遺産委員会の開催・運営を行うこと
(3) 締結国会議と世界遺産委員会での決議の履行や実施状況の報告
(4) グローバル・ストラテジーを含む諸活動の調整
(5) 国際援助の調整
(6) 世界遺産の保全管理のための予算外資金の確保
(7) 世界遺産及び世界遺産条約の広報活動

第44回世界遺産委員会

2020年委員会の中止と2021年拡大委員会の開催

第44回世界遺産委員会は、2020年6月29日から7月9日に中国・福建省の福州市で開催が予定されていた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で中止され、2021年7月16日から7月31日に「拡大第44回世界遺産委員会」として、オンライン・ミーティングの形式で開催された。

本委員会では、新たに34件の登録1件の登録抹消があり、世界遺産の総数は1154件(文化遺産897、自然遺産218、複合遺産39)となった。

登録された日本の世界遺産2件

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島

2018年に「登録延期」勧告を受けて、再推薦されたもの。2021年5月10日に登録勧告が出された。日本の自然遺産としては5番目の登録。

北海道・北東北の縄文遺跡群

三内丸山遺跡など、1道3県にまたがる17件の構成資産から成り、農耕に移行しないまま定住が営まれた縄文時代の様子を伝えている。発掘された考古遺跡のみで構成されるものとしては、国内初の世界遺産となる。

登録抹消1件

イギリスのリヴァプールは、18~19世紀に整備された港湾施設と船乗りのための教会や商業施設が往時のまま残されているが、都市再開発により現代建築が混在するようになり、著しく景観が損なわれ、2012年に危機遺産リスト入りした。イギリス政府は「開発・再開発は都市の世界遺産における必然的命題で、住民の生活向上や世界遺産維持の費用捻出のために必須である」とし、再開発の一部は修正するが全体計画は継続するとした。文化遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は再開発に伴い住民構成が入れ替わり、保全のための地域コミュニティが崩壊し、存続が危ぶまれるとした。審議の結果、世界遺産「海商都市リヴァプール」の登録抹消が決定した。

模擬試験問題

世界遺産検定の模擬試験問題

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