落水荘 , Flickr

アメリカ合衆国 世界遺産100選 検定1級

フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築

2021年11月18日

文化遺産
遺産名:
フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築
The 20th-Century Architecture of Frank Lloyd Wright
国名:アメリカ合衆国
登録年:2019年
登録基準:(ii)
概要:
フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群は、20世紀に活躍したアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトが手がけた8つの建築作品を対象とするアメリカ合衆国の世界遺産である。

すべての構成資産はそれぞれに際だった特徴を備えており、住居や礼拝、労働、教育、娯楽といった人々の生活の要求に対して新たな建築の形を提示するものである。構成資産はいずれも、彼が提唱した「有機的建築」の概念をはっきりと示している。すなわち、建築物が外部の自然と調和をはかることで、単に「住むための機械」ではなく、人間の有機的な生活を反映させたものにすべきだという考え方である。具体的には、「オープン・プラン」や「建築空間の内外の曖昧な境界」「鉄とコンクリートなどの素材の斬新な組み合わせ」などの設計技法が採られている。彼が確立した水平ラインを強調するプレイリースタイルはその好例である。「有機的建築」はフランスで活躍した建築家ル・コルビュジェらが提唱した「機能主義」の建築と対立する概念と捉えることができる。

(『世界遺産大事典』より)

世界遺産クイズ

フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築について、正しいものはどれか

主な構成資産

Unity Temple(Oak Park, Illinois)

1908年に完成したこの教会堂は、鉄筋コンクリートを斬新な方法で使用し、"自然の色 "を生かした光あふれる空間を実現した、前例のない建物。この単一素材を使った建築物は、世界で最初の近代建築とも言われている。

Unity Temple (Flickr)

フレデリック・C・ロビー邸(Chicago, Illinois)

シカゴ南部のシカゴ大学キャンパスの角に当たる部分に建つ。ライトなどが20世紀初頭に開発した草原様式で、開かれたリビングルームとセラーや貯蔵庫空間が非常に少ないことが特徴。

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タリアセン Taliesin(Spring Green, Wisconsin)

ライトの母親一族所有の土地の上に、ライトの住居兼スタジオとして建てられた。タリアセン・ウェストが建てられた後は、夏のスタジオとして機能した。現在は建設当初の姿ではなく、2度の火災により大きく改装がなされている。

Taliesin (Flickr)

Hollyhock House(Los Angeles, California)

ライトがロサンゼルスで最初に依頼された「ホリーホック・ハウス」(1918-1921年建設)は、南カリフォルニアの映画ビジネスが軌道に乗り始めた頃、イースト・ハリウッドにアート・コロニーとライブ・シアターの複合施設の一部として建設されることを意図していた。ライトとその若い弟子たちの作品は、後にカリフォルニア・モダニズムとして知られるようになるきっかけとなった。この構造は、「屋内と屋外の庭園や居住空間がシームレスに統合されている」。

Hollyhock House (Flickr)

落水荘 Fallingwater(Mill Run, Fayette County, Pennsylvania)

フランク・ロイド・ライトの有機的建築の最高傑作は「落水荘(Fallingwater)」です。この建物は、フランク・ロイド・ライトの代表作であり、アメリカ建築家協会によって「アメリカ建築の歴史上最高の作品」と評価されています。滝の上に建てられたこの家は、自然との調和を追求した建築スタイルの典型例であり、ライトが提唱した「有機的建築」の概念を具現化しています。

落水荘は、ピッツバーグの百貨店経営者であるエドガー・カウフマンの邸宅として建てられました。水辺に直接アクセスできるように設計され、周囲の自然環境と一体化しています。岩盤に鉄筋コンクリートの「トレイ」を固定し、地元の砂岩のカンチレバーのテラスが滝と調和して浮かんでいるように見えます。建物内部は、エントリー、リビングルーム、ダイニングルームが一体となっており、ガラスの壁からは周囲の風景が一望できます。

落水荘は、1964年に博物館として一般公開され、以来、数百万人以上の訪問者を魅了しています。その美しいデザインと自然との融合は、建築愛好家や観光客から高い評価を受けています。

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Herbert and Katherine Jacobs House(Madison, Wisconsin)

ジェイコブス・ハウス」(1937年)は、大恐慌の最中に建てられたが、その背景には、ライトの都市計画のアイデアがあった。それは、しっかりとした造りの一戸建ての手頃な価格の住宅を提供するというものだった。ライトは当初、この美学を「ユーソニアン」(1900年代初頭に作られた「アメリカ的」という意味の言葉)と呼んでいた。5000ドルに満たない予算の中で、ライトはオープンな設計プラン、機能的な空間、木やレンガ、染色したコンクリート、大きな窓の使用を組み合わせ、近隣の小さな景観の土地にマッチさせた。

Herbert and Katherine Jacobs House (Flickr)

Taliesin West(Scottsdale, Arizona)

1937年、ライトはアリゾナ州のマクダウェル山麓に冬の家、スタジオ、建築フェローシップセンターの建設を開始した。この建物は、ライトと彼の弟子たちによって設計され、木材、地元産の石材、砂を混ぜたコンクリートを使って建てられた。タリエシン・ウエストは、屋内外の部屋が重なり合い、原生植物を植えた三角形の庭と三角形のプールがある風景の中に作られた。

Taliesin West (Flickr)

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(New York,)

アメリカの鉱山王・ソロモン・R・グッゲンハイム(1861年 - 1949年)は、ビジネスの第一線から退いたあと、ドイツ貴族で画家のヒラ・ヴォン・リベイの協力のもと、現代アートのコレクションを始めた。それらを収蔵したこの美術館は1937年に財団として設立され、2年後の1939年、ニューヨークのマンハッタン東54丁目24番地に開館した。5番街の現在地へ移ったのは、1949年のことである。

現在の美術館は1943年にフランク・ロイド・ライトに建築設計が委託され、ライトは翌年には建築設計案を作成したが、工事に取り掛かるまでには紆余曲折があり、創立者のグッゲンハイムは没年の1949年になってようやくライトの設計案を承認した。それから建物の竣工までにはさらに10年間の歳月を要した。完工したのは1959年、ライトの死後半年後のことであった。

「かたつむりの殻」とよく形容される螺旋状の構造をもったこの建築物は、中央部が巨大な吹き抜けになっている。見学者は、まずエレベーターで建物の最上部に上がり、螺旋状の通路の壁面に掛けられた作品を見ながら順路を進むうちに自然に階下へ降りるようになっている。美術館施設の概念を根本から覆した作品として、ライトの代表作に数えられている一方で、建築自体の自己主張が大きすぎ、床が傾斜しているため鑑賞者が落ち着かず、美術品の鑑賞をさまたげるという批判もある。

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(Wikipediaより)

関連動画へのリンク

Inside Frank Lloyd Wright’s Iconic Fallingwater House

Frank Lloyd Wright, Solomon R. Guggenheim Museum

"Art, Architecture, and Innovation: Celebrating the Guggenheim Museum"

UNESCO公式HP(英語版)へのリンク

https://whc.unesco.org/en/list/1496

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