第44回世界遺産委員会
2020年委員会の中止と2021年拡大委員会の開催
第44回世界遺産委員会は、2020年6月29日から7月9日に中国・福建省の福州市で開催が予定されていた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で中止され、2021年7月16日から7月31日に「拡大第44回世界遺産委員会」として、オンライン・ミーティングの形式で開催された。
本委員会では、新たに34件の登録と1件の登録抹消があり、世界遺産の総数は1154件(文化遺産897、自然遺産218、複合遺産39)となった。今回の審議で新規に遺産保有国となった国はない。世界遺産条約を締約している国は、2020年にソマリアが加わったことで194か国になったため、そのうち、世界遺産を保有していない国は27か国となった。
登録された日本の世界遺産2件
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
2018年に「登録延期」勧告を受けて、再推薦されたもの。2021年5月10日に登録勧告が出された。日本の自然遺産としては5番目の登録。
北海道・北東北の縄文遺跡群
三内丸山遺跡など、1道3県にまたがる17件の構成資産から成り、農耕に移行しないまま定住が営まれた縄文時代の様子を伝えている。発掘された考古遺跡のみで構成されるものとしては、国内初の世界遺産となる。
登録抹消1件
イギリスのリヴァプールは、18~19世紀に整備された港湾施設と船乗りのための教会や商業施設が往時のまま残されているが、都市再開発により現代建築が混在するようになり、著しく景観が損なわれ、2012年に危機遺産リスト入りした。イギリス政府は「開発・再開発は都市の世界遺産における必然的命題で、住民の生活向上や世界遺産維持の費用捻出のために必須である」とし、再開発の一部は修正するが全体計画は継続するとした。文化遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は再開発に伴い住民構成が入れ替わり、保全のための地域コミュニティが崩壊し、存続が危ぶまれるとした。審議の結果、世界遺産「海商都市リヴァプール」の登録抹消が決定した。
危機遺産
ユネスコ世界遺産センターが危機遺産審議対象として勧告したものは以下のとおりである。
・ヴェネツィアとその潟(イタリア)
・ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り(ハンガリー)
・カトマンズの谷(ネパール)
・オフリド地域の自然・文化遺産(アルバニア側)
・グレートバリアリーフ(オーストラリア)
・W・アルリ・パンジャリ自然公園群(ニジェール、ブルキナファソ、ベナン)
・カムチャツカの火山群(ロシア)
以上の、事前に勧告が出されていたものについては危機遺産指定を回避したが、ルーマニアの「ロシア・モンタナの鉱山景観」が新規登録と同時に危機遺産にも指定された。
一方、コンゴ民主共和国の「サロンガ国立公園」は、1999年に危機遺産リストに登録されていた。その後、密猟に始まり、2007年以降は治安悪化が相まった。2018年の大統領選挙以降に一応沈静化したが、国立公園内での石油掘削が始まり、環境破壊が深刻となった。2021年になり石油掘削を中止することが決定し、自然遺産の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)が行った調査でボノボやマルミミゾウの個体数の安定化が確認された。また、地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素の吸収源として炭素固定作用があるとされる泥炭地が国立公園内に広がっており、それを含めての保全を行うと表明したことも評価された。その結果、2021年の第44回世界遺産委員会において危機遺産リストから解除された。
(Wikipediaより)