自然遺産
遺産名:
ヴィクトリアの滝(モシ・オ・トゥニャ)
Mosi-oa-Tunya / Victoria Falls
国名:ザンビア、ジンバブエ
登録年:1989年
登録基準:(vii)(viii)
概要:
ヴィクトリアの滝は、アフリカ大陸南東部、ザンベジ川中流部にある滝。幅2キロメートル、落差108メートルの大瀑布で、ジンバブエ共和国とザンビア共和国の国境に位置する。ユネスコの世界遺産に登録されている。
かつて地元のバントゥー系民族はこの滝を Shungu na mutitima と呼んでいた。その後にこの地にやって来たマタベレ族 (Matabele) は aManz' aThunqayo と呼んだ。バツワナ人 (Batswana) とマコロロ人 (Makololo) は「雷鳴の轟く水煙」という意味の「Mosi-oa-Tunya」と呼んでいた。ヨーロッパ人としてはイギリスの宣教師であり探検家でもあるデイヴィッド・リヴィングストンが1855年に見たのが最初だったと信じられている。そこでイギリス人は当時のイギリス女王の名 Victoriaを冠して「Victoria Falls」と呼び始めた。
現在、ジンバブエにおいては「ヴィクトリアフォールズ」、ザンビアにおいてはモーシ・オワ・トゥーニャ(Mosi-oa-Tunya、「雷鳴のする水煙」という意味)が公式名称である。 世界遺産登録名はこの2つを併記している。
落差と幅の両面から見た滝の規模としては、イグアスの滝と並んで世界最大である。この2つの滝に匹敵する規模の滝は他には無く、たとえばナイアガラの滝もこの2つと較べるとかなり小さい。また、増水期の水量においてもイグアスと並んで世界最大級である。ビクトリアの滝の高さは北米のナイアガラの滝の約2倍、幅はその2倍以上。
なお、落差の世界一はエンジェルフォール(ベネズエラ)の978メートル、幅の世界一はイグアスの滝(アルゼンチン、ブラジル)の約4,000メートルである。
山火事と見紛うような水煙が垂直に800 - 1000メートルほど立ち上がっており、時には虹がかかる。この様子は20キロメートル離れたところからも見える。滝壺へと落下する膨大な水が、空気を巻き込みつつ時速150キロメートルにも達するスピードで落下するので、滝壺付近では毎秒20メートルもの風が吹いている。
滝はザンベジ川の途中にある。上流は砂岩の上に堆積した平坦な玄武岩の層を流れている。川には木で覆われた小島が点在し、滝に近づくにつれてその数が増してくる。通常、滝を形成するはずの山地、断崖、渓谷などは一切見られず、滝の周囲数百キロメートルにわたって平原が広がっている。
滝の頂上には2つの島があり、満水時でも水のカーテンを分けるほどの大きさがある。西岸のボアルカ島(またはカタラクト島)と、中央部のリビングストン島(リビングストンが最初に滝を見た場所)である。満水ではない時には、さらに小島が水のカーテンを別々の平行した流れに分ける。主な流れは、ジンバブエ(西)からザンビア(東)の順に、デビルズ・カタラクト(一部ではリーピング・ウォーターと呼ばれる)、メイン・フォールズ、レインボー・フォールズ(最も高い滝)、イースタン・カタラクトと名付けられている。
Victoria Falls – The Devil's Pool | National Geographic
滝の上流にあるザンベジ川は、11月下旬から4月上旬までが雨季で、それ以外の季節は乾季となる。滝からの水しぶきは通常400メートル以上、時にはその2倍の高さまで上がり、50キロ離れた場所からでも見ることができる。満月の日には、通常の昼間の虹の代わりに、水しぶきの中に「月の虹」が見られる。しかし、洪水の季節には、滝の足元や顔の大部分を見ることができず、滝の反対側の崖に沿って歩くと、常に雨が降り、霧に包まれる。特にザンビアのナイフエッジ・ブリッジでは、崖の近くでは水しぶきが逆さ雨のように吹き上がる。
ヴィクトリアの滝近辺には玄武岩層にできた7つの峡谷 (Gorge) があり、それぞれ名前が付けられている。そのうち最も上流にある First Gorge はヴィクトリアの滝そのものである。この First Gorge はほぼ滝の幅と同じ長さを持つ峡谷であり、滝は川幅そのままに First Gorge の長さいっぱいに垂直に落下していく。滝の幅は1708メートル、落差は最も高い中央付近で108メートル、最も低い西の端でも80メートルある。First Gorge に落下した水は、その唯一の出口である幅110メートル、長さ150メートルの短い峡谷を通って次の峡谷 (Second Gorge) へと流れ出していく。ヴィクトリアフォールズ橋はこの Second Gorge に架けられた橋である。
リビングストンの発見
1855年11月、デビッド・リビングストン(David Livingstone )は、1852年から1856年にかけてザンベジ上流から河口まで旅をした際に、ヨーロッパ人として初めて滝を見た。この滝は地元の部族によく知られており、ヴォートレックの猟師たちも知っていたかもしれない。また、アラブ人も「世界の果て」という意味の名前で知っていたかもしれない。ヨーロッパ人は彼らの報告に懐疑的で、おそらく台地に山や谷がないので大きな滝はありえないと考えたのだろう。
リビングストンは上流から滝にたどり着く前に滝のことを聞かされており、現在ザンビアにあるリビングストン島という名を持つ小さな島に漕いで渡った。リビングストンはそれ以前に、さらに上流にあるンゴニェの滝に感銘を受けていたが、新しい滝の方がはるかに素晴らしいと感じ、ヴィクトリア女王に敬意を表して英語名をつけたという。リビングストンはこの滝について、「イギリスで見たものからは想像もつかない美しさである。ヨーロッパ人の目にはそれまで一度も映ったことがなかったが、これほどまでに美しい光景は、天使たちが飛翔する際に眺めたに違いない」
(Wikipediaより)