三内丸山遺跡 (Flickr)

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北海道・北東北の縄文遺跡群

2021年6月28日

概要

文化遺産
遺産名:北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県)
Jomon Prehistoric Sites in Northern Japan
登録年:2021年
国名:日本
登録基準:(iii)、(v)
登録決定:
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は2021年7月27日、縄文時代を幅広く知る上で貴重な「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産への登録を決めた。日本の文化遺産としては20件目で、自然遺産も合わせた世界遺産数は25件となった。

地図

遺産の概要

北海道・北東北の縄文遺跡群は、山地や丘陵、平野や低地、内湾や湖沼、河川など様々な地形に囲まれた北海道6遺跡、青森県8遺跡、岩手県1遺跡、秋田県2遺跡の合計17遺跡で構成されるシリアル・ノミネーション・サイト。また、関連する遺跡(関連資産)が北海道と青森県に1遺跡ずつある。各構成資産は、遺跡の構造の変遷や立地環境により、縄文時代における定住の開始・発展・成熟の過程を示す6つのステージに位置づけられる。縄文時代を「定住の開始」「定住の発展」「定住の成熟」の3つに分け、更にそれぞれを2つに分けた6つの時代区分に、青森県の三内丸山遺跡や秋田県の大湯環状列石など、17の構成資産を分類している。

これらの遺跡は、農耕以前の定住型の縄文文化が約1万年の間に発展し、その複雑な精神的な信仰体系や儀式が行われていたことを示すユニークな証拠を示している。定住開始の初期から高度な精神文化を構築しており、墓地や祭祀・儀礼の場である捨て場、盛土、環状列石などを構築し、祖先崇拝や自然崇拝とともに、豊穣への祈念や互いの絆の確認などを行っていた。それは、紀元前13,000年頃から発展した定住型の狩猟採集社会の出現、発展、成熟、環境変化への適応を証明している。縄文人の精神性の表現は、漆塗りの壺や足の形をした粘土板、土塁や直径50メートル以上の大きな環状列石などの儀式の場で、具体的な形で表現されている。この連続した構成資産は、農業以前の定住生活の出現から成熟に至るまでの、稀で非常に早い段階での発展を証明するものである。

「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、農耕や牧畜を伴った世界の他の地域の遺跡とは異なり、温暖湿潤な環境のもと 1万年以上にわたり、人類史上まれな先史時代における農耕を伴わない定住生活や豊かな精神文化を示していること、自然と共生しながら狩猟や漁撈、採集を基盤とした多様な定住生活を築いてきたこと、などが評価された。発掘された考古遺跡のみで構成されるものとしては、国内初の世界遺産となった。

(世界遺産センターHP他より)

登録基準

登録基準(ⅲ)文明の証拠

北海道・北東北の縄文遺跡群は、1万年以上もの長期間継続した狩猟・漁労・採集を基盤とした、世界的にも稀な定住社会と、足形付土版、有名な遮光器土偶等の考古遺物や墓、捨て場、盛土、環状列石等の考古遺構で明らかなように、そこで育まれた精緻で複雑な精神文化を伝える類まれな物証である。

登録基準 (v) 伝統的集落

北海道・北東北の縄文遺跡群は、定住の開始からその後の発展、最終的な成熟に至るまでの、集落の定住の在り方と土地利用の顕著な見本である。縄文人は農耕社会に見られるように土地を大きく改変することなく、変化する気候に適応することで永続的な狩猟・漁労・採集の生活の在り方を維持した。食料を安定的に確保するため、サケが遡上し、捕獲できる河川の近くや汽水性の貝類を得やすい干潟近く、あるいはブナやクリの群生地など、集落の選地には多様性が見られた。それぞれの立地に応じて食料を獲得するための技術や道具類も発達した。

(『北海道・北東北縄文遺跡群』公式サイトより)

世界遺産登録の経緯

暫定リストへの掲載

2002年8月に4道県でつくる知事サミットにおいて「北の縄文文化回廊づくり構想」が提唱され、2007年8月に4道県で世界遺産登録推進を確認。2009年1月に暫定リストに掲載された。約1万年にわたり発展し、大規模集落や祭祀道具に特異性がある「地域文化圏」であり、同時代の他文化圏にも影響を与えた、縄文時代を代表する遺産群であることを推薦理由としている。

世界遺産候補の推薦

早期の世界遺産登録を目指したが2017年までに5年連続で推薦が見送られ、2018年7月19日に文化審議会により2020年審議の正式候補に選定されたが、2020年からは文化遺産・自然遺産を問わず審議対象は一国一件に限られるようになり、自然遺産候補として「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」も2020年の推薦を目指していたことから、政府は自然遺産の候補案件が優先的に審査対象にされることを踏まえ、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を先に推薦することにした。このため、北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群は2021年の推薦に回された。2020年1月16日に推薦書をユネスコに提出して受理された。

イコモスの事前審査と世界遺産委員会での登録決定

2020年9月4~15日、イコモスによる現地調査が行われた。調査員はオーストラリア・イコモス(英語版)から派遣されたが、2021年2月に出されたイコモスの中間報告では、推薦取り下げ勧告や構成資産の変更といった厳しい指摘はないことが明らかになった。2021年5月26日、イコモスから登録勧告が出され、7月27日に開催された第44回世界遺産委員会で登録が決定した。

シリアル・ノミネーション

「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、「群」ということばが示すように、17の構成資産から成る一つの世界遺産である。このように複数の資産から一つの遺産を構成する方式は「シリアル・ノミネーション」と呼ばれている。県を跨いだシリアル・ノミネーションとしては、「明治日本の産業革命遺産」や「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」があり、国をまたいだシリアル・ノミネーション・サイトとしては、国立西洋美術館をその構成資産に含む「ル・コルビュジエの建築作品」がある。

主な構成資産

三内丸山遺跡(青森県)

青森県中央部の青森市に所在し、八甲田山系からのびる緩やかな丘陵の先端部、沖館川沿岸の標高約20メートルの海岸段丘上に立地する。水産資源豊富な内湾及び河口に位置し、後背地には落葉広葉樹の森が広がっていた。集落には、竪穴建物、掘立柱建物、列状に並んだ土坑墓、埋設土器、盛土、貯蔵穴、道路、大型建物などが計画的に配置されている。膨大な量の土器や石器のほか、食生活や環境を示す多種多様な魚骨や動物骨、クリ、クルミなどの堅果類が出土しており、通年において自然資源を巧みに利用していたことがわかる。

三内丸山遺跡 (Flickr)

大湯環状列石(秋田県)

秋田県北東部の鹿角市に所在し、米代川の支流である大湯川沿岸、標高約180メートルの台地上に立地する。食料となるサケ・マスが遡上し、捕獲できる河川の近くであり、後背地には落葉広葉樹の森が広がっていた。二つの環状列石があり、いずれも大小の川原石を様々な形に組み合わせた複数の配石遺構を環状に配置し形成されている。それぞれの環状列石を取り囲むように、掘立柱建物、貯蔵穴、土坑墓などが同心円状に配置されており、環状列石の周辺からは、土偶や土版、動物形土製品、鐸形土製品、石棒、石刀などの祭祀・儀礼の道具が数多く出土している。

大湯環状列石 (Flickr)

『北海道・北東北の縄文遺跡群』公式サイトより)

世界遺産クイズ

世界遺産検定クイズ

関連動画へのリンク

「北海道・北東北の縄文遺跡群」~青森県の縄文遺跡~

「北海道・北東北の縄文遺跡群」~北海道の縄文遺跡~

「北海道・北東北の縄文遺跡群」~岩手県の縄文遺跡~

「北海道・北東北の縄文遺跡群」~秋田県の縄文遺跡~

ANNニュース

UNESCO公式HP(英語版)へのリンク

https://whc.unesco.org/en/list/1632

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