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文化的景観 世界遺産の分類

文化的景観

2021年6月28日

文化的景観(Cultural Landscapes)の定義

文化的景観は、1992年の第16回世界遺産委員会で採択された概念で、世界遺産条約第1章第1条の「遺跡」の定義の中の、「自然と人間の共同作品」に相当するものである。人間社会が自然環境による制約の中で、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺産に認められる。文化的景観には、自然の景観と人工の景観の両方が含まれ、文化遺産に分類されるものの、文化遺産と自然遺産の境界に位置する遺産といえる。

2023年1月現在、世界遺産に登録された1,157件のうち、文化的景観として登録された遺産は121件である。ちなみに、文化的景観の要素が評価された日本の世界遺産は、「紀伊山地の霊場と参詣道(2004年登録)」と「石見銀山遺跡とその文化的景観(2007年登録)」である。

文化的景観の3つのカテゴリー

(1) 意匠された景観
庭園や公園、宗教的空間など、人間によって意図的に設計され創造された景観。
(2) 有機的に進化する景観
社会や経済、政治、宗教などの要求によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観。農林水産業などの産業とも関連している。すでに発展過程が終了している「残存する景観」と、現在も伝統的な社会のなかで進化する「継続する景観」に分けられる。
(3) 関連する景観
自然の要素がその地の民族に大きな影響を与え、宗教的、芸術的、文学的な要素と強く関連する景観

これにより、従来の西欧的な文化遺産の考え方よりも柔軟に文化遺産を捉えることが可能になり、世界各地の文化や伝統の多様性の保護につながっている。

〔例〕
1993年、ニュージーランドの『トンガリロ国立公園』において、世界ではじめて文化的景観の価値が認められた。

模擬試験問題

世界遺産検定の模擬試験問題

 

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