文化遺産
遺産名:
カルカッソンヌの歴史的城塞都市
Historic Fortified City of Carcassonne
国名:フランス
登録年:1997年
登録基準:(ii)(iv)
概要:
「歴史的城塞都市カルカソンヌ」は、フランス南西部の都市カルカソンヌのうち、城壁に囲まれた部分を指す。世界遺産登録後は、フランス国内ではモン・サン=ミシェルに次ぐ年間来訪者数を誇る一大観光名所となっている。
かつては、この部分だけでカルカソンヌ=シテという独立したコミューンだったが、現在は周辺も含めてカルカソンヌ市となっている。
ガロ=ローマン期から続くこの都市は、オード川右岸に沿って、現在のカルカソンヌ市内南東部に位置しており、ひとつの城(コンタル城)とひとつのバシリカ(サン=ナゼール大聖堂)を抱えている。
紀元前6世紀以降、この一帯にはガリア人が進出した。そして、のちには古代ローマ帝国の都市として発達した。この頃の城塞都市(オッピドゥム)の面影は、残存する図面などから窺い知ることが出来る。3世紀になると、都市は様々な攻撃にさらされ、城壁の内側に籠城することも見られた。このガロ=ローマン期の城壁は、現存する城壁の一部として残っているものもある。453年には、西ゴート王国の北部の前線都市となり、508年には、フランク国王クローヴィス1世が、カルカソンヌを奪取するために西ゴート王国を攻撃した。
トランカヴェル子爵は1096年にサン=ナゼール大聖堂の礎石を置くことを許可した。この大聖堂の建材は、ローマ教皇ウルバヌス2世によって聖別されたものであった。1130年には、子爵は城の建造に着手させる一方、ガロ=ローマン期の城壁の修繕を命じた。この時初めて、カルカソンヌは完全な城壁に取り囲まれた都市となったのである。
新たな城壁が造られたのは13世紀半ばの国王ルイ9世の時代だった。カルカソンヌは、スペイン王に支配されていたアラゴン王国とフランスとの国境紛争の前線地帯に含まれていたからである。この城塞建設以降、シテは戦火にさらされることもなくなり、百年戦争にも耐えた。大胆王フィリップ3世の治下での工事において、ナルボネーズ門、トレゾー塔、サン=ナゼール門などの建造が行われ、ガロ=ローマン期の城壁やコンタル城の外堡の修復なども行われた。
1659年に、現在につながるフランス・スペイン間の国境線を定めたピレネー条約が締結されたことにより、カルカソンヌは、その軍事的・戦略的地位を喪失した。
それ以降、アンシャン・レジーム、フランス革命期を通じて、シテは兵器や食糧の貯蔵庫として使われ、第一帝政期にも戦火とは無縁の場所となった。
戦略的な重要性を失ったことによって、シテは状態が悪化していった。19世紀末には、シテ内には112軒を数えるのみであった。塔は荒れ果てていたし、多くが貯蔵庫などに転用されていた。
1850年に、歴史家でもあったシテの名士ジャン=ピエール・クロ=メイルヴィエイユによって、シテの破壊は食い止められた。彼は、地元の企業家たちによって、外壁が石材として盗み取られていくことに心を痛めていたのである。また、彼は大聖堂の最初の本格的な発掘を行い、ラデュルフ司教の礼拝堂を発見した。
史跡調査の責任者であった作家プロスペル・メリメも、この朽ちかけたシテに愛着を抱いた。すでにサン=ナゼール大聖堂の修復作業に着手していたヴィオレ=ル=デュックは、併せてシテの修復のための研究も担当することになった。
1853年に、城塞内の西部から南西部にかけて修復工事が始まり、ついでナルボネーズ門の塔やシテの正門の修復も行われた。城塞はあちこちが補強されたものの、修復工事の主眼は、塔の屋根やコンタル城の銃眼・櫓等に向けられていた。ヴィオレ=ル=デュックは、城壁に沿った区域の土地収用と建造物の取り壊しも命じた。彼は、シテとその修復に関する数多くのスケッチも遺している。1879年に彼が亡くなると、門下に当たるポール・ベスヴィルバルドが遺志を継いだ。
彼らの修復作業は批判を招いた。実際のところ、ヴィオレ=ル=デュックやベスヴィルヴァルドの選択が常に適切なものだったわけではない。その典型例は屋根に用いられた建材である。ヴィオレ=ル=デュックは、北フランスの城を修復した経験をもとに、スレートを使って尖った屋根をつけた。ところが、カルカソンヌ一帯では、屋根はタイル作りの平らなものが一般的だったのである。このため、現在目にしている屋根は、シテ本来の屋根とは異なる特徴を持っている。ナルボネーズ門に備わっている跳ね橋も、修復工事の誤りの例とされる。しかしながら、こうした錯誤にもかかわらず、ヴィオレ=ル=デュックは、観光客にとっては壮麗なシテの姿を今日においても見せてくれる天才的な建築家とされているのである。
(Wikipediaより)
カルカッソンヌのハイキング・ルート
(Flickrより)